弁護事件例

2016.06.19 【薬物事件】覚せい剤所持・使用

覚せい剤使用の事件について、捜査手続の違法性を争い無罪を主張した事案において、捜査手続の違法性は認められたものの、無罪に至らなかった事例

否認

事案の紹介

 依頼人は、覚せい剤を使用したとして逮捕されました。
 第一審では事実関係を争わず有罪判決が言い渡されていましたが、判決が不服であるとして控訴しました。

弁護活動

 第一審判決後、控訴審で私選弁護人として受任しました。
 依頼人の尿からは覚せい剤の成分が検出されていましたが、依頼人は、警察官に呼ばれてから尿を出すまで、帰りたいといっているにもかかわらず10時間近くも警察署にとどめおかれました。
 逮捕状が出ていないのですから、警察官は、容疑者の身体を拘束することはできません。あくまで任意での捜査協力を求めることができるにすぎません。ですから、本来容疑者は自由に警察署を出ることができるはずなのですが、しばしば、警察官は、「任意での説得」だとして容疑者の身体を警察署にとどめおくことがあるのです。そして、それは度を超えると違法な捜査と評価されますが、この事件は、違法な捜査であると評価されるべきだと考えました。
 そこで、弁護人は、当時の事情を知る弁護士から事情を聴取し、また、別の事件で当該警察官の尋問をした結果などを取り寄せ、警察官による違法捜査を立証しました。
 その結果、裁判所は、警察官の捜査を違法であると認めました。
 しかし、当該警察官の捜査は、違法ではあるけれども、その違法は重大であるとはいえないとして、依頼人に無罪判決を宣告するまでには至りませんでした。