弁護事件例

2016.06.17 【薬物事件】麻薬取締法違反

麻薬特例法違反事件の裁判員裁判で,一部の証人について信用性が否定されたものの有罪となった事例

裁判員
否認

事案の紹介

 依頼人が覚せい剤の密売人と疑われた麻薬特例法違反の事件で,過去の矛盾供述の存在等から関係者の証言の信用性を弾劾する反対尋問を裁判員裁判で試みた事例

弁護活動

 依頼人は,覚せい剤の密売人であると疑われ,麻薬特例法違反(業として覚せい剤を営利目的で譲渡)で起訴されました。国選弁護人として受任しました。
 依頼人は,密売人であることを否定していましたが,依頼人が密売人であると証言する関係者が複数存在しました。そのため,関係者の証言の信用性を弾劾することが弁護活動の最大の目標となりました。
 公判は,裁判員裁判で実施されました。5名の証人尋問が行われ,弁護人から反対尋問を行いました。
 弾劾の1つのポイントとなったのは,証人の法廷での証言が,過去の供述と矛盾していた点です。証人の中には,法廷では依頼人が密売人であるとはっきり述べながら,過去に警察官等に対してはっきりとした供述をしていない人物がいました。また,過去の供述では,依頼人の顔の特徴等について明確に述べられていたわけではなく,その点でも法廷での証言と異なっていました。
 反対尋問では,そうした過去の供述との矛盾を突くことで,証言の信用性の弾劾を試みました。法廷弁護技術を駆使して,できるだけ効果的に矛盾供述を裁判員・裁判官に示すことを目指しました。尋問を行っていて,裁判員・裁判官が,矛盾する供述に疑問を持っているという手応えが感じられました。
 結果として,判決では,一部の証人について,証言の信用性が十分には認められないとして,依頼人が犯人であることを直接的に裏付ける証拠にはならないと判断されました。
 ただし,その他の証拠も総合した結果,依頼人が犯人であるとの結論が出され,有罪判決となってしまいました。