弁護事件例

2016.06.17 【薬物事件】覚せい剤密輸

共犯者多数と共謀のうえ覚せい剤の密輸をしたと疑われた事案において、ほう助の主張が受け入れられず、懲役3年の判決となった事例

裁判員
否認

事案の紹介

 依頼人は、覚せい剤の密輸に関与したとして起訴されました。密輸の方法は、海外からの荷物の中に覚せい剤を隠し、それを郵便で届けさせるという方法でした。共犯者とされる人物の一人が当該荷物を受け取ったところ、それは税関ですでに覚せい剤であることが発覚した荷物であり、捜査官があらかじめついてきていた(いわゆる「コントロールド・デリバリー」)ため、逮捕されました。依頼人は、その共犯者とされて逮捕され、起訴されました。

弁護活動

起訴されて裁判になった後、国選弁護人として受任しました。
依頼人から話を聞くと、依頼人は密輸に積極的に関与していたわけではなく、共犯者の子分のような立場で覚せい剤の小分けや配達などをやらされていたという事情があることが判明しました。
そこで、弁護側は、依頼人は共犯者と一緒になって密輸に関与していたのではなく、共犯者の密輸を手伝っていただけである(法律上「幇助」といいます)との主張をすることにし、執行猶予判決を求めることにしました。これまでの裁判のデータなどを調べると、覚せい剤の密輸について幇助が認められて執行猶予になったケースは、当時調べられる限り、1件しかありませんでした。しかし、この事件の依頼人は、それにふさわしい程度の関与しかしていないと思われました。
 事件は裁判員裁判で争われました。
 裁判では、依頼人が共犯者と一緒になって密輸に関与していたのか、共犯者の密輸を手伝っていたにすぎないのかが争われましたが、弁護人は、依頼人の役割は小さく、幇助にとどまるとの主張を行いました。
 裁判では共犯者の尋問が行われましたが、共犯者らは、口をそろえて、依頼人は積極的に密輸に関与していたわけではない、役割は小さかったという話をしてくれました。
 しかし、判決では、共犯者の証言を採用せず、依頼人が行っていた覚せい剤の小分けや配達などの行為を重視して、依頼人の役割が小さいとはいえないと評価し、弁護側の幇助の主張を受け入れませんでした。裁判所は、依頼人に懲役3年の判決を宣告しました。