弁護事件例

2022.06.06 【放火】現住建造物等放火

現住建造物等放火で執行猶予付判決となった事例。

執行猶予
裁判員

事案の紹介

 解離性同一性障害等に罹患していた被告人が、滞在していたマンション内の祖母の自宅に放火し、同祖母方を全焼させるとともに、建物の外壁等を焼損させた事案。

弁護活動

 境界性パーソナリティ障害である被告人が解離性同一性障害にも罹患しており、事件当時の記憶が全くなかったことから、行為時には別人格が出現していたことが疑われました。弁護人は、被告人は心神耗弱の状態にあったと主張しました。また、被告人が上記行為に及んだ背景には、父親からの虐待や母親から十分な愛情・配慮を受けて成長することができなかった、との不遇な生育歴と、事件直前まで同室に滞在していた母親への葛藤が大きく影響していることがうかがわれました。そのため母親への反対尋問を行い、被告人の過酷な生育歴や、母親の被告人に対する態度に問題があったこと等の事情を詳細に立証しました。また精神科医に対する尋問を行いました。
 心神耗弱の主張は認められませんでしたが、被告人の境界性パーソナリティ障害及び母親との不安定な関係が大きく影響した犯行であるところ、境界性パーソナリティ障害をかかえるに至った原因の一端には、幼少時の父親からの暴力や母親から適切な配慮が受けられなかったことが関係しており、被告人に有利に考慮すべきとされました。その結果,懲役3年執行猶予5年の判決となりました。