弁護事件例

2022.05.23 【殺人】

殺人事件で,共同正犯ではなく,幇助犯とされた事案。

一部無罪
減刑
裁判員
否認

事案の紹介

 被告人が,他の共犯者2名(A及びB)と,保険金を得る目的で殺人事件を起こした事案。Aが,首謀者とされ,被害者が死亡した場合の保険金受取人となる保険契約等を締結し,Bが現場で被害者を海に突き落として殺害した。

弁護活動

被告人は,共犯者2名と殺人罪の共同正犯として起訴されました。
被告人は,①共犯者Aが,保険金を得る目的で被害者を殺害することを知りつつ共犯者及び被害者を車に乗せて犯行現場まで運転し,②共犯者Bが被害者を海に突き落とす現場におり,③他の共犯者と犯行後の口裏合わせ等に協力していたことから,検察官は,被告人を殺人罪の共同正犯として起訴しました。
弁護人は,被告人の役割は,共同正犯ではなく,幇助犯だと主張しました。
検察官は,被害者を殺害した実行犯(共犯者B)の証言等により,被告人の役割が大きかったことを立証しようとしました。弁護人は,共犯者に反対尋問を行い,実行犯(共犯者B)の証言が一部信用できないと判断され,共同正犯ではなく,幇助犯だと判断されました。
弁護人は,反対尋問前に,共犯者A及びBの弁護人の了解を得て,共犯者A及びBと接見し,それぞれのキャラクターや法廷で述べることを想定して反対尋問を準備しました。また,共犯者Bは,SNSで殺人に積極的な様子を見せていたり,逮捕当初は,殺害行為を実行したのは自分ではなく,被告人であったと嘘をついていたこともあり,そのような弾劾材料を活かした反対尋問を行いました。
検察官が起訴した共同正犯(刑法60条)ではなく,幇助犯(刑法62条)だとされたことにより,刑の必要的減軽がなされた結果,被告人は,懲役10年(求刑15年)となりました。なお,首謀者とされた共犯者Aは,第1審では,無期懲役の判決となっています。