弁護事件例

2016.06.17 【薬物事件】覚せい剤密輸

スウェーデンから来日した女性の覚せい剤密輸事件で,有罪判決(懲役10年・罰金400万円/求刑12年・罰金500万円)が言い渡された事例〔裁判員裁判〕

裁判員
否認

事案の紹介

被告人は,スーツケース内に隠匿された覚せい剤(約2.6kg)を日本に入国する際に申告せず,税関検査時に覚せい剤が発見された。被告人は,本件スーツケースはアルメニアで知り合った男性がくれたもので,覚せい剤が隠匿されていることを知らなかったと述べたが,有罪となった。

弁護活動

国選弁護人として受任した裁判員事件です。

捜査段階では,日本までの渡航経緯等をよく聴きましたが,依頼者自身も記憶が混乱していることもあったので黙秘することとしました。

起訴後,依頼者の言い分を裏付けるための活動を行いました。
依頼者は,スウェーデン在住のイラン人です。依頼者の家族も同国に住んでいます。
検察官は,収入に乏しい依頼者が日本に来ること自体不自然だと主張しました。
依頼者の家族とは,メールやスカイプで話をすることができたので,弁護人から出廷を依頼したところ,海外旅行に行ける程度の収入はある等の被告人に有利な証言をするために来日してくれました。

被告人は,アルメニア経由で来日したのですが,同国で知り合った男性から,「本件スーツケースをもらった」と言っていました。
被告人の話を前提にした場合,アルメニアでたまたま出会った男性が,麻薬密輸組織の人間で,たまたま日本に行く依頼者を利用してスーツケースを運ばせたことになります。その話自体,裁判官及び裁判員に共感してもらうのは困難です。
そこで,アルメニアで知り合った男性とのメール・チャット等のやりとりや,被告人が密輸組織に関係する人間ではなく,スウェーデンで普通の生活をしていた証拠等を提出しました。また,被告人の親族にも,密輸組織との関係が疑われる人物がいて,その人物とアルメニアで会った男性が共謀して被告人を罠にはめた可能性があるとの主張も行いました。

残念ながら,裁判で,被告人の話は信用されず,覚せい剤取締法違反・関税法違反被告事件で有罪判決となりました。