刑事弁護ブログ

2022.07.04 刑事弁護コラム

保釈中,GPS端末により被告人の位置情報を取得・把握する制度

保釈請求を行う際,弁護人は,裁判官に対して,被告人を保釈しても,罪証隠滅及び逃亡のリスクがないことを伝えます。逃亡防止の観点では,家族や仕事を失い,保証金の没取リスクをおかしてまで逃亡しないことなどを伝えていくことが多いです。適切な身柄引受人が被告人の行動等を監督することをアピールする事件もあります。
とはいえ,被告人の所在を常に監視することは実際は困難です。

法制審議会刑事法(逃亡防止関係)部会では,保釈中,GPS端末により被告人の位置情報を取得・把握する制度を創設するかどうか議論がなされました。そして,次のような内容の要綱(骨子)案がまとまり,今後,国会で審議されることとなりました。

【要綱(骨子)案】
第五 GPS端末により保釈中の被告人の位置情報を取得・把握する制度の創設
一 GPS端末装着命令
1 裁判所は,保釈を許す場合において,被告人が本邦外に逃亡することを防止するため必要があると認めるときは,被告人に対し,GPS端末(人工衛星から発射される信号を受信して端末の位置及び当該位置に係る時刻の測定(以下「位置測定」という。)をするとともに,位置測定に係る端末の位置及び時刻に関する情報(以下「端末位置情報」という。)を伝達する信号を裁判所が管理する電気通信設備に送信する機能を有する電子計算機であって,人の身体に装着された場合においてその全部又は一部を損壊することなくこれを当該人の身体から取り外すことを困難とする構造その他裁判所の規則で定める構造を有するものをいう。以下同じ。)を自己の身体に装着することを命ずること(以下「GPS端末装着命令」という。)ができるものとすること。

(上記は,法務省のHPからの抜粋)
https://www.moj.go.jp/content/001357085.pdf

GPS端末は,保釈される事例の全てに適用されるわけではありません。
「被告人が本邦外に逃亡することを防止するため必要があると認めるとき」に検討されるものですから,海外に生活の本拠があったり,海外での生活が可能な資産家等が想定されるように思われ,実際にこの制度の対象となる事件はさほど多くないと思われます。
今後,国会で答申された要綱(骨子)案が議論されることとなりますが,どのように立法されるのか(あるいはされないのか)注目されます。

法律事務所シリウス
弁護士 菅 野  亮