刑事弁護ブログ

2020.05.13 刑事弁護コラム

取調べの撮影方向と心理学

取調べの様子を録音・録画する事件が増えています。録音・録画した記録は,刑事裁判の法廷で再生して,証拠として取調べることもあります。典型的なのは,取調べで自白した被疑者(起訴後は被告人)の供述が,本当に「任意」で行われたのかどうかを確認するために,取調べの際の映像を視聴するという場合です。
この点,現在,捜査機関は,被疑者を正面の角度から撮影する方法を採用しています。これは,いわば,映像を見ている人間が被疑者の正面に座る取調官の目線でみた映像ということになります。心理学の知見によれば,このように,撮影方向として専ら被疑者にカメラを向けた映像を見せられた場合に,被疑者と取調官の双方を側面から平等に撮影した映像を見せられた場合よりも,自白が「任意」でなされたものだと考えやすい傾向にあるとの報告がなされています。実際に,海外では,撮影方向を側面からに変更した国も複数あるようです。裁判官・裁判員が,中立公正な判断を行いやすいように,取調べの撮影方向を側面からに変更することを日本でも試みてもよいかもしれません。

法律事務所シリウス 虫本