刑事弁護ブログ

2018.11.21 刑事弁護コラム

反対尋問の技術

刑事裁判で事実が争われるとき,検察官が立証のために証人を呼び,証人尋問が行われるのが通常です。
このとき,弁護人は検察官が呼んだ証人に対して反対尋問をすることになります。
例えば無実を主張している被告人の場合に,被害者や共犯者,目撃者などが法廷に出てきて,被告人が犯人であることを示す事実を証言することになります。
被告人からすれば,その証人は誤ったことを言っていることになる場合があります。
例えば,傷害事件に問われた事件で,被告人は殴ってない,と主張しているとします。
これに対し被害者が被告人から殴られたと証言した場合,被害者は,被告人の主張からすれば,嘘を証言していることになります。
このとき,反対尋問を弁護人がするわけですが,その被害者に対し,
「本当は被告人は殴ってないでしょう」
とか
「あなたは嘘をついているのではないですか」
などと質問してみても,「いいえ。本当です。殴られました」などと言われるだけです。
ドラマの世界のように,証人が,「すいません。私が嘘をついてました」などということはまず起こりません。
そうすると,「被告人に殴られた」という被害者の証言が嘘であることを明らかにするための反対尋問は,単に,被害者を責めたり,それは嘘だと追求したりするのでは全く効果がないということになります。
被告人からすれば,被害者の証言が間違いであるため,それが嘘であるということを言って欲しいという気持ちになると思いますが,それをそのままぶつけても逆効果なのです。
そこで必要とされるのが,反対尋問の技術です。
反対尋問の技術は,その証言が嘘であることを裁判官や裁判員に分からせるために,どのような問いをどのような形で行えばよいかと言うことに関するものです。

反対尋問の技術は,それ自体が学習可能なものであり,弁護士会でも近年特に力を入れて研修をしています。
もちろん,民事事件でも尋問はありますから,反対尋問の技術は民事事件でも役に立つでしょう。

東京ディフェンダー法律事務所 坂根真也