刑事弁護ブログ

2026.05.18 刑事弁護コラム

カルテはいつも証拠になるわけではない

被害者や事件関係者が怪我をしたか、したとしてどのような傷病名、重さなのかが争われる事件では、医師の作成した診療録(カルテ)が証拠として請求されることがあります。検察官はカルテの記載内容が正しいことを立証しようとします。本来、法廷外で作成された書面は、同意されなければ証拠とならない(カルテであれば、それを作成した医師の証人尋問がなされなければならない)のが原則です。しかし刑事訴訟法には例外的な規定があり、公務員が職務上証明できる事実について公務員が作成した書面や、業務の通常の過程において作成された書面、それに準ずるような書面については証拠となります(刑事訴訟法323条3号)。カルテについては伝統的に、このような書面に該当するとして証拠になるとされています。

ところが検察官は、カルテにとじられていたり、記載されているという形式的な理由で、カルテに書かれている医師の診断に関する判断結果や、事件関係者の発言なども証拠にしようとすることがあります。例えば医師の診断に関する判断結果は、診断書等に本来記載されるものであり、機械的・反復的に作成されるものでもありませんから、医師を尋問しなければ証拠とすることはできません。

弁護人が適切に反対意見を述べれば、裁判所は、「カルテの●●という部分は、証拠として採用しない」として、証拠にできる範囲を適切に限定することが期待できます。弁護人が反対意見を述べないと、このような判断は期待できませんので、カルテであるから証拠能力はあると安易に判断するのではなく、内容面にまで踏み込んだ詳細な検討が必要です。

東京ディフェンダー法律事務所 赤木竜太郎