1 私自身は、刑事事件だけでなく、倒産関連事件を扱うことも多いですが、倒産に至る企業の場合、不適切な資産管理がされていたり、会計帳簿の内容が実体を反映していない場合があります。
ただし、債権者からみれば許しがたい行為であるとしても、破産手続を選択すること自体は、犯罪ではありません。特に、個人の破産事件により、債務者の経済的な再生がはかれる場合があることも否定できません。
今回は、破産法違反で刑事事件になった事例を紹介します。
2 破産法265条1項2号及び4号違反が問題となった事案(静岡地裁沼津支部令和4年1月12日)
この事案は、会社専務取締役の被告人が,会社代表取締役と共謀の上,会社の傘下にある破産した子会社につき,同社の債権者から破産手続開始の申立てがあり,その破産手続を妨害するべく,子会社の資産であるホテル建物の敷地利用権を喪失させ,かつ,同建物の譲渡を仮装したという破産法違反の事案です。
破産法は、265条で、詐欺破産罪として、次のように規定しています(下線は、筆者が引いたものです。)。
破産手続開始の前後を問わず、債権者を害する目的で、次の各号のいずれかに該当する行為をした者は、債務者(相続財産の破産にあっては相続財産、信託財産の破産にあっては信託財産。次項において同じ。)について破産手続開始の決定が確定したときは、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。情を知って、第四号に掲げる行為の相手方となった者も、破産手続開始の決定が確定したときは、同様とする。
一 債務者の財産(相続財産の破産にあっては相続財産に属する財産、信託財産の破産にあっては信託財産に属する財産。以下この条において同じ。)を隠匿し、又は損壊する行為
二 債務者の財産の譲渡又は債務の負担を仮装する行為
三 債務者の財産の現状を改変して、その価格を減損する行為
四 債務者の財産を債権者の不利益に処分し、又は債権者に不利益な債務を債務者が負担する行為
本事例では、ある物件の敷地利用権を喪失させ,かつ,同建物の譲渡を仮装した行為が、破産詐欺罪に該当するとされました。
経済的な危機時期において、資金繰りのために、ある程度、廉価で資産を売却等することはあるかと思いますが、それと異なり、債権者を害する目的で、財産を隠匿、損壊したり、譲渡や債務負担を仮装する行為は、犯罪になりますので注意が必要です。
3 破産法265条1項1号、268条1項違反が問題となった事案(東京地裁平成30年5月25日)
この事例は、破産会社の代表取締役であった被告人が,同社の財務担当従業員と共謀の上,被告人及び同社の破産手続開始前に,被告人の財産1890万円及び破産会社の財産1億1000万円をそれぞれ隠匿した上,被告人の隠匿財産につき,破産管財人に対し虚偽の説明をしたとする破産法違反事案です。
破産法違反に問われる事例では、財産の隠匿行為が問題となることが多いのですが、破産管財人に対して虚偽の説明をする事例も少なくありません。
破産管財人への虚偽説明罪は、次のように規定されています。破産事件においては、破産者やその代理人には、誠実な説明義務が課されており、違反した場合には、犯罪になることがあることは注意しておく必要があります。
(説明及び検査の拒絶等の罪)
第二百六十八条 第四十条第一項(同条第二項において準用する場合を含む。)、第二百三十条第一項(同条第二項において準用する場合を含む。)又は第二百四十四条の六第一項(同条第二項において準用する場合を含む。)の規定に違反して、説明を拒み、又は虚偽の説明をした者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。第九十六条第一項において準用する第四十条第一項(同条第二項において準用する場合を含む。)の規定に違反して、説明を拒み、又は虚偽の説明をした者も、同様とする。
なお、この事例では、懲役3年の実刑となっており(求刑懲役4年)、刑も軽くありません。
法律事務所シリウス 弁護士 菅 野 亮