刑事弁護ブログ

2025.10.27 刑事弁護コラム

裁判員裁判は多数決?

裁判員裁判では、裁判官と裁判員が、事実認定(有罪か無罪かなど)や量刑について評議をした後、評決をして裁判体としての結論を出すことになります。
評決における有罪か無罪かの判断は、基本的に裁判官と裁判員の多数決で決まることになります。この点は、英米法系の陪審裁判との大きな違いです。陪審裁判では、有罪判断のためには陪審員全員一致での評決が求められることが多く、全員一致を求めない制度でも、有罪の要件は過半数よりは遙かに厳しいことが通常です。
また、英米法系の陪審裁判では、陪審員が関わるのは、事実認定の判断のみであることが通常です。量刑判断についても裁判員が関与する日本の裁判制度は、この点にも特徴があります。

ただし、日本の裁判員裁判においても、単純な多数決のみで事実認定や量刑判断が決まるわけではなく、いくつかの例外があります。
まず、仮に過半数の評決が揃ったとしても、そこには裁判官と裁判員の両方からの票が入っていなければいけません(裁判法第67条1項)。つまり、裁判員のみが無罪の票を投じて過半数を超えたとしても、裁判体としての結論は出せないことになります。
また、量刑を決める評決においては、被告人にとって最も不利な意見から数えていって、その意見が過半数に達した刑の重さが裁判体としての結論になります。例えば、裁判官及び裁判員9名のうち、懲役4年の意見が3名、懲役5年の意見が2名、懲役6年の意見が2名、懲役7年の意見が2名だった場合には、重い方から数えていって過半数に達する懲役5年が結論となります。

法律事務所シリウス 弁護士 中井 淳一