刑事弁護ブログ

2023.11.21 刑事弁護コラム

通貨偽造は裁判員裁判

偽札が見つかった、などの報道を見ることがあります。
偽物のを通貨を本物であるかのように偽って使用することは、偽造通貨行使罪、という罪に該当します。通貨偽造については、刑法148条に定められています。

(通貨偽造及び行使等)
第148条
1 行使の目的で、通用する貨幣、紙幣又は銀行券を偽造し、又は変造した者は、無期又は三年以上の懲役に処する。
2 偽造又は変造の貨幣、紙幣又は銀行券を行使し、又は行使の目的で人に交付し、若しくは輸入した者も、前項と同様とする。

148条では、通貨を偽造する行為も、偽造の通貨を使用する行為も同様に無期又は3年以上の懲役、とされています。
なお、偽造通貨行使は自ら偽造した通貨である必要はありません。例えば、友人から偽物だよと言って譲り受け興味本位で使ってしまっても、同じ罪になります。

法定刑に無期懲役が定められていることから、起訴されれば裁判員裁判で審理されることになります。
裁判員裁判は、法定刑に死刑又は無期懲役が定められているか、故意に死亡させた事件(傷害致死等)が対象なためです。
例えば強盗罪は裁判員裁判対象事件ではありません(強盗致傷や強盗殺人は裁判員裁判です)。

偽造通貨行使というと、強盗罪と比べてそこまで重大でないように思われる方もいるかもしれませんが、通貨制度というのは国家の基礎的なルールであり、それが崩れると社会が立ちゆかなくなるため、通貨偽造に対しては大変重い刑が定められているのです。

実際の量刑は、無期懲役となることはほとんどなく、初犯で常習性もなければ執行猶予判決となることが多く、組織的な偽造などで実刑となる場合も、比較的短期の実刑となっているケースが多いようです。

東京ディフェンダー法律事務所 坂根真也