刑事弁護ブログ

2023.08.21 刑事弁護コラム

コラム 国選弁護人の報酬

刑事裁判は、原則として弁護人を選任しないと開くことができません。逮捕起訴された人は、いつでも私選弁護人を選任することができますが、資力が無いなどの理由で私選弁護人を選任していない場合、国が国選弁護人を選任します。
国選弁護人の報酬は、国から支払われます(なお、国が支払った国選弁護人の費用は被告人に支払いを負担させる判決となる場合があります)。

国選弁護人の報酬は、裁量ではなく一定の基準が定められています。
https://www.houterasu.or.jp/housenmonka/kokusen/index.files/kokusengaiyoukai.pdf

① 被疑者の場合
被疑者国選は、起訴される前の国選弁護人ですが、接見回数が基準になります。
勾留延長されると20日間の勾留期間となり、その間何回接見したかで報酬が変わります。

② 被告人の場合
起訴されると被告人国選になりますが、公判の回数とその時間によって、起訴報酬が変わります。
そのほか、裁判員対象事件か、公判前整理手続に付されているか等によって基礎報酬も変わります。

国選弁護人の報酬が高いか低いか、は議論のあるところですが、刑事事件を中心に弁護活動をしている身としては、国選弁護の報酬で事務所経営をしていくことはまず難しいでしょう。
全体の額の低さとは別に、実際の国選弁護人の労力が報酬に反映されない、という問題もあります。
被告人国選は、上記のように原則として公判の回数や時間が基準になるため、接見回数や記録の検討時間などは考慮されません。
接見に1回行くだけでも、100回いっても報酬は変わりません。
記録が少なく検討に数時間でおわっても、記録が膨大にあり記録の検討に1000時間かかってもそれだけで報酬に違いはありません(相対的には記録が多ければ公判回数が多くなる可能性はあります)。

このように、弁護人が力を注げば注ぐほど、時間あたりの報酬は低下していくという関係にあります。
一件一件を見れば、個々の弁護士はお金のために活動してるわけではないと思いますが、労力に見合った報酬が支払われないと、刑事弁護活動をしようという意欲を失わせ、熱意ある若い弁護士が担当しなくなってしまうでしょう。

東京ディフェンダー法律事務所 坂根真也