刑事弁護ブログ

2023.03.20 刑事弁護コラム

取調べの録画録音と黙秘

逮捕された後の取調べで録画録音がされることがあります。
密室で行われる取調べで違法不当な圧力を被疑者にかけるなどして,虚偽の供述をさせる事例が後を断たないことから,数年前から導入されたものです。
現在,裁判員裁判対象事件や特捜事件などは必要的にされ,それ以外の事件でも否認事件などでは録画録音が行われることがあります。
録画され保存されることから,不正な取調べが減ったことは確かです。
しかし,そもそも取調べる側と受ける側では,同じ事柄でも受け取る印象は全くことなります。
例えば,取り調べる側が被疑者が犯人であると思い込んでおり,なんとか罪を認めてもらいたいと,罪を認めないと家族も悲しむぞ,と言ったたとして,言われた側は,認めないと家族に迷惑がかかると心理的な圧力と受け取ることになります。
このように,録画録音下でも,不当な圧力を受けたと認定されるケースもないわけではありません。
さらに,録画されて保存されるということは被疑者側にとって不利益に作用する場合もあります。
人は突然逮捕され,精神的に混乱する中で,何の資料もなく,結果的に事実と異なることを話してしまうことがあります。
後から冷静に思い出して違うことがわかっても,録画という証拠として残ってしまうと,裁判で検察側から弾劾されるリスクがあります。
そのため特に否認事件などでは,録画されていても黙秘することをまず検討する必要があります。
録画されていない時代には,黙秘すると,それこそ様々な圧力を取調官がかけてきましたが,録画されていることで黙秘を翻意するように圧力をかけるにも限界があり,黙秘がやりやすい環境になっているのです。

東京ディフェンダー法律事務所 坂根真也