刑事弁護ブログ

2022.12.11 刑事弁護コラム

控訴審における事実の取調と破棄判決

第一審判決が不服で控訴すると、高等裁判所で裁判が行われます。
第一審の裁判では、たくさんの証人が出廷したり、被告人自身も事件に関する詳しい話をしたりする手続があるのですが、控訴審ではいずれも裁判所の裁量によるものとされています。
そのような手続で控訴審で証拠を取り調べることを「事実の取調」といいます。事実の取調がたくさん行われることもありますが、むしろ、多くの場合は事実の取調を行わずに、第一審での証拠を書類上で判断して判決をします。
しかし、たとえば一審で無罪判決を言い渡されたのに、書類審査だけで無罪判決を破棄し、有罪とするようなことが許されて良いでしょうか。被告人からすれば、直接証人や自分自身の話を聞いてくれた裁判所が無罪の判断をしたのに、書類上だけで有罪と言われてしまうことに納得がいかないかも知れません。
この点に関しては議論が分かれるところではありますが、最高裁判所は、第一審の無罪判決を破棄して有罪判決をする場合には、事実の取調をしなければならないとされています。これは、やはり被告人にとっては、直接・口頭での審理を経た上で不利益な判決をしなければ適正な手続とはいえない、という価値判断に基づいています。これは、無罪を有罪にする場合のほかにも、第一審の事実認定を変更(事実誤認を認定)して被告人に不利益な判断をする場合に広くあてはまると思われる最高裁判所の判例が集積されています。

弁護士山本衛