刑事弁護ブログ

2021.05.11 刑事弁護コラム

勾留における罪証隠滅の判断

刑事事件で逮捕された場合,さらに勾留という最大20日間の身体拘束を受けて取調べなどの捜査を受ける可能性があります。
逮捕に続く勾留は,検察官が請求し裁判官がこれを認めるか判断します。
裁判官は,犯罪の嫌疑があるか,住居不定,罪証隠滅のおそれ,逃亡のおそれといった勾留の理由があるか,勾留の必要性があるかを判断します。

勾留の理由があるかで特に問題となるのは罪証隠滅の点です。
罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるかどうかが問題となるもので,一般的抽象的なおそれでは足りず,具体的蓋然性があることが必要と解されます。
その判断は,罪証隠滅の対象,態様,余地,意図を検討するとされています。

罪証隠滅の対象となるのは,疑われている犯罪事実のみならず,起訴不起訴や刑の重さに影響するような重要な情状に関する事実も含まれると解されています。
また,罪証隠滅の態様として,証拠品を隠したり処分したりする行為だけではなく,被害者,目撃者,共犯者などに不当に働きかけを行い,有利な供述を得ようとする行為も含まれると考えられています。
このため,犯罪事実自体には争いがなくても,なお被害者に対して不当に働きかけて示談等を行おうとすることも含まれます。
そして,罪証隠滅の余地として,客観的可能性やその実効性が検討され,罪証隠滅の意図として,主観的可能性が検討されます。

勾留が認められないように裁判官に意見書を提出し,また勾留に対して準抗告という不服申立を行うにあたっては,罪証隠滅を疑うに足りる相当な理由がないということを,こうした判断を念頭に事案に即して具体的に主張をする必要があるといえます。

東京ディフェンダー法律事務所 弁護士 藤原大吾