刑事弁護ブログ

2019.10.09 刑事弁護コラム

裁判の分離

 ゴーン事件で,ゴーン氏側の弁護士が日産自動車と裁判を分離するよう求めたとの報道がありました。
 裁判の分離とは,同時に訴追されていた共犯者の裁判を別々に行うということです。
 ある事件で犯人が複数いて共犯関係にある場合,検察官は1つの起訴状で公訴提起することが通常です(逮捕の時期がずれたり,共犯者多数の場合などは,最初から別々に起訴することもあります)。

 同じ事件ですから,証拠もほぼ共通し,証人尋問なども重なります。証人が何度も法廷に出廷することも負担ですし,別々の裁判所が判断することで同じ事件について判断が分かれないようにするために,同時に裁判を進行することもメリットがあります。

 他方で共犯関係のうちある被告人は事実を認めており,ある被告人は事実を否認している場合など,同じ裁判で行うことが難しい場合もあります。
認めている被告人は例えば被害者や関係者の供述調書に同意し証人尋問は不要と考えても,否認している被告人は争いがあるため調書を不同意として尋問を求めるとすると,同じ裁判で進行する事に無理が生じてきます。

 また,同じ裁判体が1人は認めていて1人は否認していると,どうしても認めている人のことを信用しがちで,争っている人にとっては,別の裁判で公正に行って欲しいと考えるのは当然のことです。

 裁判所も以上のような事情を踏まえて,裁判を同時に行うのか,分離して別々に行うのかを判断することになります。

東京ディフェンダー法律事務所 弁護士 坂根真也