刑事弁護ブログ

2018.06.06 刑事弁護コラム

マスコミ報道の問題点

容疑者が逮捕されると,マスコミによって,容疑者が~と言っているなどと,取調べでの供述が報道されることがあります。
マスコミは,関係者によれば,などとすることがよくありますが,マスコミ報道されるような事件の場合,通常は接見禁止となり,被疑者の供述を知りうるのは,警察官,検察官,弁護人しかいません。
弁護人は被疑者に不利益なことをすることはあり得ませんし,そもそも守秘義務を負っていますから,被疑者が望むという例外的場合でない限り,マスコミに被疑者の供述を発表することはありません。

ですから,被疑者の供述が報道されるのは捜査機関の誰かというのが実態です。
取調官なのか,その上司なのかはわかりませんが,捜査機関は一定の意図のもとにマスコミに情報を流します。
それは,逮捕した被疑者の印象を悪くするためであったり,捜査機関の手柄であることをアピールするものであったり,事件の構図を一定方向に誘導するためであったり,様々です。

しかし捜査初期のこのような捜査機関の見立てが事後的に誤りであったということはいくらでもあり,マスコミに一方的に情報を流し,それがそのまま報道されることには問題が大きいといえるでしょう。
特に裁判員裁判では,一般市民の人が参加しますが,報道により受けた事件の予断やイメージを取り去ることは不可能です。

刑事弁護人の仕事をしていると,いかに刑事事件に関するマスコミ報道が誤りを含むものであるかが身にしみて分かります。

東京ディフェンダー法律事務所 坂根真也