弁護士をしていると、依頼者から「この証拠を出してください」と依頼を受けることがたくさんあります。弁護士は、当然、その証拠が有用であると考えれば、依頼者のために証拠を提出します。
しかし、刑事弁護においては、一つ重大な制約があります。
それは、書類での証拠や、又聞きの証拠は法廷で証拠にできない、というルールです。
まず書類での証拠です。例えば、弁護側証人になってくれるという人が、法廷に行きたくないので、いいたいことを書類にまとめて裁判に出そうとしたとしましょう。これは、検察官の同意がなければ、証拠になりません。もし同意が得られない場合は、その証人を法廷に連れてきて尋問を受けなければならないのです。そう考えると、たとえばインターネット上の誰が書いたかわからないような記述や、誰が書いたかわかる場合であってもおよそ書いた人の証人尋問を実現することが不可能な場合は、原則として証拠とすることはできないのです。
次に又聞きの証拠です。たとえば、法廷で証人を受けたWさんが「被告人のXさんは事件当時飲食店にいたと、その飲食店のマスターから聞きました」と話したとしましょう。この証言は飲食店のマスターからの又聞きとなっていますが、このような証言は原則として証拠になりません。この事実を立証したい場合は、マスターに直接証人尋問しなければならないのです。
このように、刑事事件においては、証拠の提出に大きな制約があります。これを前提に立証の戦略を練る必要があるのです。
法律事務所創衛 弁護士山本衛