捜査機関による違法な取調べが実施された場合、被疑者・被告人とされた方が、国に対して黙秘権や人格権が侵害されたことを理由として、損害賠償を請求する裁判(国家賠償請求訴訟)を提起する場合があります。
以下のケースでは、判決において、実際に取調官(国)の違法があったことが認定され、慰謝料の支払いが命じられています。
このケースでは、実際にどのような違法な取調べが行われていたかを知ることができる録音データが公開されていますので、ご紹介します。
「三重県鳥羽署事件」
・事件の概要
商店のパート従業員であった女性が、売上金を盗んだとの嫌疑(窃盗被疑事件)をかけられました。
女性は、当初から否認をしており、捜査の結果、不起訴処分となりました。
・取調べの状況
女性は、在宅事件の被疑者として、出頭を求められ、警察署での取調べを受けました。その人取調べは、合計7時間21分という極めて状時間に及ぶものでした。
女性は、自身の防御のために、秘密録音を実施していました。
取調べを行った警察官は、「やってないってどの口が言うとんねやって怒ってやりたくなるんやわ、こっちは。泥棒が何言うとんねんってなってくんねん、こっち。」「じゃあ、誰が取った?誰が取ったの?あんたしかおらへんがな。」「犯人やないかお前が。誰がおんのや、ほかに。ええかげんにせえ。」「顔見とったらわかるわな、泥棒みたいなもん。泥棒!!!」「お前の捜査に幾ら掛かっとると思うとる。全部請求するぞ、お前。」「おい、何か言うたらどうや?黙秘か?黙秘権を行使しとんのか?そんなもん、泥棒に黙秘権あるか。」等の暴言を繰り返しました。
・判決
「原告の黙秘権を侵害し、原告の人格を繰り返し否定するものであり、全体として社会通念上相当な方法および限度を逸脱したものであって、国賠法1条1項の適用上、違法である」と判断し、70万円の支払を命じました。
・URL
日弁連「日本の刑事司法見える化プロジェクト」「取調べ問題事例 事例25」
https://www.nichibenren.or.jp/activity/criminal/visualisation/mondaijirei.html
法律事務所シリウス 弁護士 虫本良和