刑事弁護ブログ

2025.06.09 刑事弁護コラム

証人尋問において被告人が直接質問できるか

無罪を主張する刑事裁判において、証人尋問がないということは珍しいでしょう。
刑事裁判では、過去にあった出来事について、事実かどうかを裁判官が判断する場ですが、警察、検察官が収集した証拠は全てそのまま法廷に提出できるわけではありません。
証拠物などの客観的なものは、事件に関連する限り法廷に提出することが可能ですが、供述調書や捜査報告書など警察官、検察官が見聞きした捜査書類は、そのまま提出できるわけではありません。
弁護側が証拠とすることに同意しなければ、検察官は証人尋問を請求しなければならないのが原則です。
例えば、目撃者等から警察官が話を聞いて書類にまとめたとしても、本当にその話をしたのかどうか、その話が信用できるかどうかは、書類を見るだけでは分からず、直接法廷で証人尋問をし、それを裁判官がみることによって判断が可能となるからです。

証人尋問は、交互尋問という方式で行われるのが基本です。
交互尋問とは、証人尋問を請求した側が主尋問(問答形式)を行い、反対当事者が反対尋問を行い、最後に裁判官が補充尋問を行うという形式です。
検察官が立証責任を負う刑事裁判では、検察官請求の証人尋問の方が圧倒的に多くなります。

検察官の主尋問に対して、反対尋問を行うのは被告人本人ではなく、その利益を擁護する立場にある弁護人が行います。
弁護人が反対尋問を行っている間、被告人は席に座ってその問答を聞いている、ということになります。

ここで、被告人本人が直接証人に質問をすることはできるでしょうか。
自身が体験したことと異なる供述をする(と感じられる)証人に対して直接質したいと思うのも自然な感情といえるでしょう。
基本的には、代理人である弁護人が行う運用が確立していますが、法的に許されないわけではありませんし、実際に行うことが認められるケースもあります。
専門的知見が問題になる事件で、被告人自身が専門家である場合などがあります。

ただし、反対尋問は当事者が行うより、一歩引いて冷静な立場から弁護人が行う方が効果的なことが多く、実際に被告人本人が尋問をすべきかは十分弁護人と打ち合わせをする必要があります。
また、被告人本人の質問を裁判所に求めれても、事件の性質や証人の属性などで許容されない場合ももちろんあります。

東京ディフェンダー法律事務所 坂根真也